平均テンパイ巡目について

麻雀勝ち組の選択II

麻雀勝ち組の選択II

リアル雀ゴロの福地先生の新麻雀本『麻雀勝ち組の選択2』が発売されました。
まだ100ページほどしか読んでいませんが前回のよりもより突っ込んだ内容が載っている感じでお薦めです。
(前回の内容はほとんど覚えていませんが。)
読んでて数学的に気になる箇所が2点ほどあったので、
2回にわたって更新します。
数学的な内容を含むので数学が嫌いな人は読み飛ばして頂いた方が賢明です。
(勘の良い人は2回目の更新内容がどういう内容かわかるはず。
2回目は1回目よりもさらに長くなりそうなのでもしかしたら2回で終わらないかも。)
『麻雀勝ち組の選択2』を持っている人はp.37の5番の問題を見てください。
(冒頭で本の宣伝したんで引用はご容赦下さい。)

親4巡目
4556m1115p445566s ドラ5p

ちなみに答えは5mです。まあ大体の人はテンパイ取りますね。
問題はそこではなく、p.39の最後の方から続いている文章です。

「アンコの1pを切って5mと5pのくっつきテンパイに受けたとき、
3m4m5m6m4p6pツモでリャンメンテンパイします。
1種類のパイをツモる可能性は3%ですから、
6種類なら18%。つまり平均5巡でリャンメンテンパイします。
早いといえば早いし、遅いといえば遅いですね。」

ここを読んでちょっとアバウトな計算だと思った人はいないでしょうか?
私は正直本当にこれで大丈夫なのかと思いました。
この計算方法は凸本でも使っていましたが当時から怪しいなと思っていました。
ここでは便宜的に「3%仮定」と呼ぶことにします。
心配な点は以下の3点です。

・1種類の牌をツモる確率は3%ではない。
⇒正確には4/136で約2.94%です。
・巡目が進むことにより1種類の牌をツモる可能性は高くなるが考慮しなくてよいのか?
⇒山の牌が少なくなるにつれテンパイになる確率はその牌を引かない分当然増加します。
・自分の手牌やドラ表示牌を考慮しなくて良いのか?
⇒他人の手牌や捨て牌は問題の条件に無いので等しく分布していると考えるとしても、
 (関連牌が極端に多く捨てられていたら当然テンパイしにくくなる。
  いわゆる河読み、山読みのファクターは考えない。)
 自分の手牌やドラ表示牌は問題の条件に与えられているので考慮する必要があるはずです。
 今回の場合は4m6m4pが見えているのでこの分テンパイにはなりにくいはずです。
 これを考慮する計算方法を便宜的に「真の3%仮定」と呼ぶことにします。

この心配事を解消するには実際に計算するしかありません
(この計算方法を便宜的に「真面目な計算」と呼ぶことにします)。
ここでは詳細な計算は省きますが簡単に要点だけ書きます。

・この時点で分からない牌は、
136-13(自分の手牌)-1(ドラ表示牌)-4(自分の河に並べた不要牌)=118(牌)。
・テンパイする牌は4(牌)*6(種)-2(4m, 6m)-1(ドラ表示牌)=21(牌)
・1巡ごとに分からない牌が1牌ずつ減っていく。
・期待値は、{Σ(k=1〜n)k*(k巡目にテンパイする確率)}を
n→∞にしたときの値。
 必要なのは小数点第1位まで。今回は小数点第3位の値が動かなくなったnまで計算する。
 (もちろん無限等比級数を使っても構わないが後々のためこの方法で計算する)

ポイントは太字部分の「n→∞」にすることです。
この部分を「麻雀は約18巡で終わるからn=18とする」と考えるとおかしなことになります。
この計算の結果、期待値は以下のように収束して平均巡目は約5.4巡目(正確には5.40909…巡目)ということがわかります。

これを「3%仮定」と「真の3%仮定」で計算してみます。
「3%仮定」は本の通りで、100/(3*6)≒5.56(巡目)となります。
「真面目な計算」で算出した値とかなり近い値が出ましたね。
それでは「真の3%仮定」で計算してみましょう。
テンパイする牌は21牌なのでテンパイの種類は21/4=5.25(種類)。
あとは「3%仮定」と同じように計算すると、100/3*5.25≒6.35(巡目)となります。
せっかく手牌とドラ表示牌を考慮して計算したのに結果は「真面目な計算」とずれてしまいました。
ちなみにテンパイする牌の枚数(受け入れ枚数)を変えてもこの両者はずれてきてしまいます。
ただ受け入れ枚数が多くなればなるほど両者の差は小さくなります。

ここで問題です。
「真の3%仮定」と「真面目な計算」はなぜずれてしまったでしょうか?
その理由はそもそも「3%仮定」というのは山全体に牌が均等に分布していることを仮定しているためです。
なので手牌13牌および捨て牌の4枚, ドラ表示牌1枚の中には受け入れ牌6種が何枚か入っているのが自然であり、
その枚数の期待値は18*(6/34)≒3.2(枚)となります。
今回除外した牌は3枚なので大体この期待値と一致しています。
なので「真の3%仮定」というのは間違った計算方法であり、
本の通りの「3%仮定」を使った方が大抵の場合近い値が算出されます。
今回除外した牌がもし0枚なら6種24枚となり「真面目な計算」では平均テンパイ巡目は4.76巡目となり、
「3%仮定」の6種の平均テンパイ巡目5.56巡目よりも0.80巡早くなります。
逆に除外した牌が8枚なら6種16枚となり「真面目な計算」では平均テンパイ巡目は7.00巡目となり、
平均テンパイ巡目は1.44巡遅くなります。
除外した牌が何枚かを認識することで、より正確に平均テンパイ巡目が出せるようになります。
それが嫌なら「真面目な計算」のグラフの値を覚えておき、
常に受け入れ枚数を数えて平均テンパイ巡目を算出するのが良いでしょう。
まあ平均テンパイ巡目が1巡違うからといってそこまで戦略に差が出てくるとは思いませんので、
そこまでシビアに考えなくても良いとは個人的には思いますが。
最後に上のグラフは4巡目シャンテンのときですが、
8巡目、12巡目、16巡目ではどのようになるのかを示したグラフを示します。

どの巡目であっても平均テンパイ巡目はほとんど変わりません。
つまりは、受け入れ枚数さえ見ておけば平均テンパイ巡目はほぼ特定出来るということです。
ちなみに本筋とはずれますが平均テンパイ巡目までにテンパイする確率は、
1-1/e=0.632…→約63.2%(eは自然対数の底)となります。
平均テンパイ巡目の2倍の巡目でテンパイする確率でさえ90%位なので
残り10%はそれでもテンパらないということです。
これを知っているとなかなかテンパらないときでも意外と冷静にいられます。