複雑な牌姿の平均テンパイ巡目について

前回の日記で「2回にわたって更新する」と書いておきながら
約8か月の間、更新をサボってしまいすみません。
今行われている第3期天鳳名人戦の牌譜検討も書きたいのですが
取り敢えずこれを片付けます。
持っている人は、コンビニ福地本3冊目の「麻雀勝ち組の選択2」のp.94を見てください。
(最近出た4冊目ではないので注意)
以下のような記述が見られます。

なお、ここからメンホンをテンパイするまで平均何巡かかるのか
理系の大学院の方々に聞いてみたところ、
爆発的に複雑だから計算できないと言われました。

文中の「ここ」とは次の牌姿a(p.92)です。

5巡目
7m123566778p白白東・・・a
(ホンイツに向かうために問題の牌姿から6mを切っている)
ただし、マンズでのテンパイは認めない。

前回の記事と同じシャンテンの牌姿ですね。
ちなみに前回の記事の牌姿a'(p.37)は、

4巡目
4556m115p445566s・・・a'
(浮かせ打ちをするために問題の牌姿から1pを切っている)
ただし、リャンメン以外のテンパイはツモ切り。

です。
同じシャンテンの牌姿だというのに、
a'では平均テンパイ巡目が簡単に計算できる一方で、
aでは平均テンパイ巡目が「爆発的に複雑だから計算ができない」というのは、
いったいどういう理由からなのでしょうか?
aとa'での最も大きな違いは、
「より良いシャンテンの牌姿がある」
ということです。
(実はa'でも3sや7sをツモればより良いシャンテンにはなりますが、
イーペーコーが崩れるおそれがあるので本では有効牌と見做していない)
「より良いシャンテンの牌姿がある」ときは福地本で用いられている
「3%仮定」(←前回の記事を参照)を適用するのは複雑になります。
工夫すればできるのでしょうがかえって面倒です。
おそらく「3%仮定」で頑張って計算しようとしているから、
本書には「爆発的に複雑だから計算ができない」と書かれているのだと推測されます。
では、どうやって計算すれば良いでしょうか?
この問題を解消するには、前回の記事と同様、
やはり「真面目な計算」をするのがいちばんです。
まずより良いシャンテンの牌姿を書き出します。
aではより良いシャンテンの牌姿が以下の11パターン(b〜l)があります。

123566778p白白東南・・・b(←南は西, 北, 發, 中でも可)
1123566778p白白東・・・c(←1pツモ)
1223566778p白白東・・・d(←2pツモ)
1233566778p白白東・・・e(←3pツモ)
1234566778p白白東・・・f(←4pツモ)
1235566778p白白東・・・g(←5pツモ)
1235666778p白白東・・・h(←6pツモ)
1235667778p白白東・・・i(←7pツモ)
1235667788p白白東・・・j(←8pツモ)
1235667789p白白東・・・k(←9pツモ)
11235566778p白白・・・l(←テンパイしないピンズ2種ツモ, 3種ツモは必ずメンホンテンパイ)

次にこれらb〜lと初期条件のa, それにテンパイ牌姿を加えた13パターンの牌姿間の遷移確率を求め、
13本の確率漸化式を立てます。
これを用いて各巡目について下記のようにExcel上で計算します。

図の上半分は各牌姿の起こる確率を各巡目において計算しています。
図の下半分は確率の計算に必要なそれぞれの有効牌の数を入力しています。
図では入りきらなかったのですが、この図の下にはaと同様にb〜lの有効牌の数が入力されています。
各確率の計算結果は下記のようになります。

横軸がそれが起こる巡目、縦軸はそれが起こる確率です。
メンホンのテンパる確率は
3巡後(8巡目)までで20%程度,
7巡後(12巡目)までで60%程度,
10巡後(15巡目)までで80%程度
であることが読み取れます。
これよりテンパイまでにかかる巡目の平均(期待値)を計算すると、
例によって下記のように収束します。

これにより、平均テンパイ巡目は12.171巡目(7.171巡後)
であることが分かります。
たぶんこの計算方法であっているはずです。
(←計算ミスはあるかもしれないので誰か確かめてください)
ちなみに本書ではこのあと、

なので、概算の数値も出せないのですが、
まあ平均して8〜10巡くらいかかるんじゃないか
と思われます(適当)。

と書かれてあります。
正解は7.171巡なので、福地先生は正解よりもちょっと遅く見積もっていることが分かります。
ただ1, 2巡の誤差は大して戦術には影響してこないので
この見積もりの誤差は麻雀を打つ上ではそんなに問題はないとは思います。
麻雀を打つ上で重要なのはむしろ、
各牌姿ごとに「あと大体何巡でテンパるか?」ということを
多少外れてもいいから常に考えて打つということだと思います。
次回から、第3期名人戦の牌譜検討をしたいと考えています。
全部は出来ないかもしれませんが、なるべく多くの牌譜を見ていきたいです。